メタルハライドランプについて

 このHPの実験データでも、メタルハライドランプ(以後メタハラと略)のUVB照射量について掲

載しましたし、ビバリウムガイド26号の爬虫類ライト考にも、思ったよりメタハラのUVB照射量は

パワーUVBなどの蛍光管式爬虫類ライトに比べて少ないことを記しましたら、関西の某メーカー

さん(以後M社)から「そんなことはない。他社のはともかく、うちで出しているメタハラのUV照射

量は充分だ」とクレームを受けました。M社が、メタハラを爬虫類用に製品化していることを知ら

ずに、他のメーカーさん(以後I社)の製品を調べてひとくくりにメタハラはUVB照射量が不十分

だとしたことはこちらのミスであることを認め謝罪しました。確かに、見せていただいたデータは

信頼おける調査機関のもので、パワーUVBの数倍の照射量を示していたからです。

 しかし、そのとき気になったのが、UVCの照射量の多さでした。「これは危険ではないですか?」

と逆に問いましたところ、「いや大丈夫なんだ。」という根拠の無い答えが返ってきただけでした。

実は、メタハラ自体は太陽光以上に非常に強い紫外線を照射することもできるライトなのですが、

カバーのガラスの種類で紫外線照射を制御しています。ところが、UVCを完全カットしてUVBを

充分に照射するガラスの開発はまだ行なわれていないようです。だから、I社のように安全を優先

してUVカットガラスでUVCをカットすると、紫外線照射量実験データのような結果になりますし、

M社のようにUV透過ガラスを使用するとUVBの照射も多くなるが、危険なUVCも照射してしまう

ということになってしまうのです。弊社のUV透過ボードを使えばとの声もありますが、残念ながら

アクリル製なので、熱に弱く蛍光灯には使えてもメタハラには使えません。では、何故これほどま

でに、メタハラのブームが起こったのでしょうか?それは10年以上前から、ときどき爬虫類先進

国と言われるドイツの飼育設備が雑誌などで紹介され、マニアの間でも使いたいという気持ちが

膨らんでいきました。それが、日本でも発売され雑誌のライター達も絶賛して勧めたために一大

ブームが起こったのです。更に、紫外線照射量を調べることは一般ユーザーには難しいので、そ

の評価は体感によるものしかありませんでした。使ってみると「活動的になった。餌をよく食べる。

脱皮をして綺麗になった。」など光束量の多さと保温効果による結果が紫外線照射が充分である

との誤解を生み、さらにフラシーボ効果が重なっていったわけです。紫外線不足は、短期には判

明しないためショップでも、誤解を持ったままメタハラを勧めています。ところが、長期飼育を行っ

ている動物園やブリーダーさんたちは、気づき始めました。どうしてクル病が発生するのだろうか?

これはドイツの飼育環境をよく調べもせずに、日本で商品化し、その使い方も説明せずに発売し

たメーカーの責任ではないでしょうか。雑誌で紹介されたドイツの飼育設備は広い展示施設のも

のです。高い天井から吊り下げられ生体までは距離があるのでUVCを照射するメタハラを使って

も大丈夫なのです。短い波長ほど照射有効距離が短くなるからです。飼育管理者も広い場所なの

で、ライトの真下に行くことは滅多になく、観覧者も分厚い紫外線カットガラスによって守られてい

ます。

 そのような広い設備に、UV透過ガラスを採用したタイプのメタハラを導入することは賛成ですし、

小さなケージにも使えるような特殊ガラスが開発されることを私も希望しますが、知識を持たずに、

やみくもにメタハラの性能を信用して導入することは危険ですし、爬虫類もかわいそうだと私は思

うのです。


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